イノベーションを起こす組織とは-デザイン・イノベーション[ハルトムット・エスリンガー(著)]

イノベーションを起こす組織とは-デザイン・イノベーション[ハルトムット・エスリンガー(著)]

工業製品のデザインコンサルティング会社としてアップル、ソニーをはじめ、グローバル企業の製品プロダクトを担当してきた「フロッグデザイン社」。著者はその創始者であり、デザインでイノベーションを起こしてきたハルトムット・エスリンガー。

著者は長年に渡り、グローバル企業とともに仕事をしてきた経験から、組織の栄枯盛衰を見てきた。そして、イノベーションを起こせる企業に必要なもの、そのきっかけや戦略に関しては惜しみなく語っている。

創造的な戦略で重要な「倫理観」

著者は、イノベーションを起こせる組織に重要なのは「倫理観」である、という。

創造的な戦略には大きなリスクが伴う。時にはリスクを承知の上で倫理的な信念を貫かなくてはならない。しかし理想や原則だけでは戦略は実行できない。創造的な戦略の実行のためには具体的な方法やプロセスが不可欠だし創造性にあふれたリーダーシップも必要になる。

「真のうそ」より

企業の存続において、正しい経営の重要性は分かる。ただ、資本主義において売上至上主義になってしまい、不正が行われ、売り上げという名目の元、隠蔽されてしまったりする。しかし、この本では「組織の倫理観」に関して、くどいほど強調している。

ビジネスにおいて倫理的なリーダーシップはいかに大切かは、いくら強調してもしすぎることがない。倫理、的に行動することは単に正しいというだけでなく、自分の利益にもなる。

複数の研究によれば倫理的に間違った行為が罰されないまま放置されるとやがて、それがその会社の標準業務手順となるという。だから倫理を重んじることはリーダーの基本的な責任であり、いかなる企業の創造的な戦略においても欠かせない要素となる。

(「真のうそ」より)

倫理的に悪い行為が「標準業務」になることほど、怖いことはない。しかし、破綻した組織では、一人の心無い行動がほころびとなり、やがてダムが決壊するように組織の崩壊が起きる。

だから、経営陣は常に、組織が倫理的に正しく運営されているか、チェックする必要がある。巨大な組織になればなるほどチェックは難しくなるが、欠かせない問題でもある。

イノベーションはアイデアの共有から生まれる

著者は組織に対して、どのような提案をしてきたのか。本の中では、さまざまな企業へのデザイン事例も紹介されているが、アップルの創始者・スティーブジョブスへのアドバイスが印象深い。

私は暫定 CEO としてアップルに戻ったスティーブから戦略のアドバイスを求められた時、カスタマーエクスペリエンスを重視した新しいタイプの会社を築くべきだと助言した。

(「真のうそ」より)

1990年代半ば、まだ、UXやCXが一般的でなかった頃から、著者はその重要性を説いていた。もちろん、その重要性に気づいたからといって、簡単に新しいアイデアが生まれたり、デザインに落とし込められるものでもない。

そういった、イノベーションへのアイデアは話し合いの中で生まれるという。もちそん、フロッグデザイン社には、長年の経験で生み出された独特の発想手法がある。

それは「フロッグTHINK」と名付けられ、私たちのコラボレーションでは毎回用いられている。THINKの基本コンセプトは利用可能なあらゆる情報や知識を集めそれを全て本質的な要素に「分解」するというものだ。例えば、飲料用ボトルをデザインするとき、アイデアの源泉となる本質的な要素は、機能性や見た目ではなく、「喉の渇き」だ。

(「頼りになるのは金より人間」より)

本質的な要素を見極め、それに対するアイデアをみんなで共有する。会議やワークショップと呼ぶ、その共同作業の中から新しいアイデアが生まれ、イノベーションにつながる、と言う。

組織がイノベーションを起こすには、強力なリーダーシップを持ったリーダーが必要だがそれだけではダメだ。スタッフたちがアイデアを出し、共有し、イノベーションを起こせるアイデアに育てあげることが重要だ。

自分たちの所属している組織はイノベーションを起こせる組織になっているか。今一度、考えてみたい。

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