人間て単純で奥深い-予想通りに不合理[ダン・アリエリー(著) ]

人間て単純で奥深い-予想通りに不合理[ダン・アリエリー(著) ]

行動経済学ブームのきっかけとなった1冊。著者はアメリカの心理学、行動経済学の教授で「イグノーベル賞」も受賞している。TEDで行ったプレゼンは780万回以上の再生回数を誇るほどの人気者だ。

著者は人間の行動に関してさまざまな角度から、実験し、検証してその不思議な行動に関して考察をしている。その内容はマーケティングから、心理学、経済学まで幅広く応用できる。

社会規範のコスト

人に何かを依頼するとき、どれくらいの費用(謝礼)を払えばよいか、考えてしまうもの。そんなときには、人間関係におけるコスト、を考えてみたい。

人間社会には「社会規範」と「市場規範」という二つの関係性がある。「社会規範」は、社交性や親密な人間関係と大いに関係する。例えば、他人に親切をすることは自分も相手も良い気分になるし、行為に対して見合った対価を払う必要はない。いわば、無償の関係性だ。

一方、「市場規範」とは対等な利益や原則的に支払いが発生する関係性のこと。市場規範の関係で行動を起こしたときは、支払った分に見合うものが手に入るし、依頼者も相応の対応をする必要がある。

全米退職者協会は複数の弁護士に声をかけ、1時間当たり30ドル程度の低価格で困窮している退職者の相談に乗ってくれないかと依頼した。弁護士たちは断った。しかしその後、困窮している退職者の相談に無報酬で乗ってくれないかと依頼すると圧倒的多数の弁護士がひき受けると答えた。

(社会規範のコスト)

安い価格の報酬は受けないが、いったん、お金抜きの話になると社会規範を適用し、自ら動くようになる。これから、人に何かを頼むときは、市場規範で依頼するか、社会規範で考えるか、よく考えた方がよい。

個性を強調したい「独自性欲求」

人はものを選ぶとき、本当に自分が欲しいと思ったものを選ぶとは限らない。そんなことはない、と思っていたが、著者はある実験からそれを証明している。

その実験は、4人テーブルでビールのオーダーをもらうとき、口頭で順番に注文を聞くときと、記名式で人知れず注文をもらう、というやり方で行われた。

1人ずつ順に人前で注文する形の方が1つのテーブルで注文されるビールの種類が多かった。つまり多様性が好まれた。他のビールが先に「取られて」しまうと実験協力者はそれ以外のビールを注文しなければならないと考えて、だれも注文していないビールを選んだ。

(ビールと無料のランチ)

アサヒビールが好きなのに、先に注文されてしまい、同じものでも問題ないのに自分が個性的だと主張したいがために、違うビールを選んでしまうことがあるのだ。そして、後悔することも多い、と書き加えている。

人間は不思議なもので、他人に何らかの印象を与えるために自分の好きではないものを選択することがあるのだ。

人間が効率的で合理的でないことが、よくわかる。この本を読むと、そんな人間心理が細かく、実証実験とともに紹介されている。人間て面白い生き物だなあ、と考えさせられる1冊だ。

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